十月のあいさつ

 お元気に過ごされていることと思います、そちらの様子はいかがですか。

 わたしのほうはといえば、今年は何だか変な気候で十月に入っても最高気温が三十度を超える日があって、着る服に困っています。それでも風や空気は秋のものになって、深い色の洋服や冬のブーツの出番も近いですね、きっと。

 わたしにも気力が出てきてこうして(一方的ではありますけれど)、文字を綴っています。夏は暑過ぎて、湿気も酷くて、どうもいけません。昔は夏が好きでしたけれど、この地に来て以来湿度の高さに閉口しています。
なつかしい夏はもうどこにもないのでしょう。じりじりと焼かれるような日差しとどこまでも乾いた空気。すこん、と抜けた高く濃く青い空。記憶は残酷です。
ああ、繰り言はこの辺で止めます、過ぎ去ったものを追うよりもいま楽しいこと、を考えるようにしたいと思うのです。

 そういえば、道端に鳥の羽根が落ちていました。もう冬に備えて生え変わる季節なのでしょうか。それとも羽づくろいのときに抜けただけなのでしょうか。いずれにしても、土の見えないコンクリートとアスファルトの街には不似合いでした。踏みつける訳にも拾い上げる訳にもいかず、「あ、羽根だ」と思って通り過ぎただけなのですが、生きものは強いですね、すくない街路樹などを頼みに見えないところで生きているのですから。

 この間などはベッドの足元に小さなクモが這っていて、ここに来た君の運がないのだ、と思って叩き潰したつもりだったのですが失敗してどこかに逃げられました。寝ている間に顔を這われたらどうしよう、と殺虫剤を撒いておきました。数日経ちますが不快感で目が覚めることはないので、クモは部屋から出ていったのだと思うことにします。それにしても窓を開け放っているときは網戸ですし、わたしがベランダへ出入りするわずかなスキを狙って入り込むのでしょうか。不思議です。不思議といえば、学生時代には家にハムスターが迷い込んできたことがあります、それも真夜中に。……横道もいいところですから、この話はまた機会のある時にしましょう。

 秋らしいことはまだ何も起きません。涼しくなってきたなと思って、愛用の万年筆(安くても万年筆には変わりませんからね)を取った次第です。
 わたしのことですから、寒くなったらまた文句のような文を書くのでしょう。ご面倒ですが、お付き合いくださいね。

2016/11/2