ひとみをうるおす。

うつろな渇いた眼球を流して夜の底に立つ。
涙していたおぼろげな記憶とともに押し流されて。
眼窩の深さを知らされ
戸惑う頭のまま闇の中にいた瞬間、
転がり込む新たな、眼。
追いつけないまぶたが瞬きを繰り返し、
うるおいを飲み込もうとする双眸。
映るものが全部黒いのは真夜中だから。
わずかな濃淡だけが形を伝える。
眠りを排した夜に転げていった眼、
夜毎入れ替わっているなんて知らなかった。
見たいものだけ見る訳にはいかない日々の
雑多な映像は記憶しつづけられなくて、
おびただしい行動は記録の範疇を超え、
今となってはなぜ泣いたのかも分からない、
起きている理由も。

遠い眠り、
電気は消したまま遮光カーテンを開け放つ。
新しいひとみが掴む色合い、
淡いレースカーテンの奥、
真っ暗に紺色が混じる。

次第にひとみは生気を増す。瞬く間隔がのびる。
未だ暗い明け方のうすい光を拾って
映す窓の外。
常温のガラスはただそれらを透過させる。
白い月 わずかな星 昼夜を問わない信号機。
すべてが新しい朝の予感に
ひとみはうるおっていく。

 2016/6/4