靴跡

硬く冷たいフローリングに立ち
足の裏は悲鳴ひとつ上げず
温度を奪われていく。
鈍いシンクのひかり。

何が悪い訳ではない。
間の悪い歯車が噛み合ってしまった、だけ。
そんな積み重ねでまたひとつ
失っていく。

夜空に浮かぶ街灯の明かり
暗くて明るいきみょうな街並みに、逃げ出す。
こたえはない、
呼ぶ声も、正しいふるまいも。

どこまで近かった距離は
ふたりの、それぞれの形を曖昧にし、
いつまでも同じでいられると錯覚させた。
醒めない夢であればそれでよかった?

離れはじめたふたりの形は息を吹き返し、
鏡に映った影よりも遠く、
わたしはあなたを見ている。
あれほど重なっていたことが信じ、られないほどに。

いつかは壊れてしまうものとして、胸に抱いたやわらかな影。
落ちていく声が距離を知らせて
離れ小島、
そう、もとはばらばらだった、ね、
どれだけ共有してもふたりはふたりのままだと
わからなかった、
あの頃の混濁。

長い長い霧雨が降って、ふたりのあいだを隔てた。
とうに終止符は打たれていて、
足元、
靴跡は別々の方向を向いている。

冷え始めた夏の終わり、
きみょうな夜空の下でわたしはひとり、
あなたといたふたりの形を葬る。

2016/8/31