紡ぐ

そうして、物語は閉じるのだった。
「その後」を生きない彼/彼女らとさようならして、
この脚でこちら側の続きを紡いでいく。

二重うつしの現実の中、
わたしは三時間で十日間を五ヶ月間を一年間を、あるいは
もっと長い時間を過ごす
窓の外で何が いや
部屋の中で何が起きても構わない、
その世界への没入。

呼び声深くて。
一度踏み入れたら知らなかった頃は思えなくなる。
手の中で開かれた世界よ、どうか、
わたしを追い出さないで。

文字が形を持ち色づき香り立ち上がる。
祈りは彼/彼女らに向かって鳴り響く。
いつの間にか私も生きている、
大きく広がる手の中で。

たかが文字?
いいえ、それは彼/彼女らの話し声、一挙手一投足、街の姿、料理の匂い、
世界を構成するあらゆるもの。
目で追うだけで、ここにいながら旅をしている。

物事にはいつか終わりが来るということを
大団円に交われない瞳で知る。
彼/彼女らに喜びも悲しみも伝えるすべはなく、
わたしの手のひらは限りがある。
生きている一人の観客として踏み入れられる境界線。

余韻に紛れながら、
わずかな痛みを包む。
あの場所でわたしが生きたことを、生き続けられないことを知って。
「おしまい」の符号が打たれた時、
容赦なく「その後」がこちら側を向く。
逃れられない。
浸り続けることを許されないから。
伸びゆく一歩で進もう、そのほかに道はなく。

そうして、物語は閉じたのだった。
わたしの中に脈々と息づく彼/彼女らを残して。

2016/12/11