生み出す

庫内灯すらあたらない
冷蔵庫のドアポケットに安置されている
たまご。
プラスチックの容器に整然と並んで
つるりとした表面にはかすかな紋様が浮かぶ。

まるみは手のひらに添い
あたたかさを拒絶する。
はじめから求められた、のは
冷やされること、
何も生まれ出ないように。

送り出されたときの願いに
絡めとられて
あきらめを殻の中にたたえて
ここまで連れてこられた、
たまごの身じろぎ。

この手は命を宿さない。

金属のペン軸が生ぬるくなる熱を帯びても
たまごひとつ
あたためられない。

知った顔ですでにあるものを並べ替えて
生み出したと誤解している、頭を置き去りに
身体は正直に欲しがる。

ぬくもらないたまごを
熱してサラダ油をなじませたフライパンへ割り落とし、
生まれ出ることのないきみを食む。

食まれたきみは明日のわたしを生むのだ、
あきらめを振り切って。

2016/11/10